2024/05/27を追加しました
日本、特に古都京都の陶芸は長い歴史を持ち、さまざまな窯が生まれ、進化してきました。
その中で現在は主に「電気釜」「ガス釜」そして「薪窯」などが陶磁器の焼成に使われています。
それぞれの窯の特徴は
薪窯
陶芸の伝統的な窯で、登り窯・蛇窯・穴窯などがあり日本では古代から中世にかけて一般的に用いられていました。薪を燃やして火を起こし。 数日から数週間かけて焼成します。
電気釜
電気を使って陶芸作品を焼成する窯です。電気釜の最大の特性は、温度調節が容易であり、均一な焼成が可能であることです。これにより、作家は自分の理想とする作品を確実に作り出すことができます。
ガス釜
ガスを燃料とする窯で、温度調節が容易でありながら、電気釜とは異なる独特の風合いの作品を生み出します。ガス釜は、窯の内部に自由な酸化還元環境を作ることが可能で、これが作品に美しい色合いと独特の風合いをもたらします。
京都の陶芸作家たちは、これら三つの窯それぞれの特性を理解し、それぞれに適した技術や表現を追求しています。
それぞれの窯の特性を活かし、その限界を押し広げながら、作家たちは常に新たな表現を追求しています。それが、京都の陶芸作品が世界中から愛され続ける理由の一つなのです。
中でも今回は薪窯の代表、登り窯についてスポットを当てたいと思います。
登り窯の魅力
「登り窯」とは、山の斜面に建てられ、その坂を登るように炎が移動する釜のことを指します。その名の通り、山を「登る」ような形状をしていることから、登り窯と呼ばれています。
登り窯は、大量の陶磁器を一度に焼くことが可能な上、一般的な窯と違って、傾斜を利用しているので上部で焼成する陶磁器の熱が下部へと流れ、焚き火からの熱が均一に分散され、作品一つひとつに均一な仕上がりをもたらします。
また、窯の中での炎の流れや温度の変化が作品に微妙な色合いを与えるため、唯一無二の個性豊かな陶磁器が生まれます。
一方で、電気釜やガス窯とは異なり、登り窯の制御は非常に難しいです。電気釜やガス窯は温度調節が容易で、短時間で焼成が可能ですが、登り窯は数日間かけてじっくりと温度を上げていく必要があります。これには確かな経験と技術が求められます。
今日の京都市内では、環境保護や安全規定のために、登り窯を使用することは許可されていません。しかしながら、何人かの京都の陶芸家たちはその制約を乗り越え、京都の外で登り窯を用いて陶磁器を制作しています。それは、登り窯による焼き物がもつ深い色合い、自然の風合い、そしてひとつとして同じものがないという魅力を求めてのことなのです。
登り窯の陶磁器は、その制作過程での困難さを物語るような深みと繊細さを持ち、見る者を引きつけます。一方、電気釜やガス窯による作品はその安定した品質と効率的な制作過程が魅力です。これらの異なる特性を活かして、京都の陶芸家たちは世界に誇る日本の工芸美術作品を作り続けているのです。