フランスを代表する高級ブランド一族の1つで、注目すべき変化が起きた。26歳のフランソワ・ルイ・ニコラ・ピノー氏が、祖父のフランソワ・ピノー氏から、名門オークションハウス、クリスティーズの取締役の職を引き継いだのだ。3月26日のフィナンシャル・タイムズ紙が報じたこの人事は、ピノー家の系譜において極めて重要な瞬間であり、高級ブランド複合企業を取り巻く綿密に計画された後継者戦略を示唆している。
1766年に設立されロンドンに拠点を置くクリスティーズは、1998年にピノー家の投資部門であるアルテミスの所有となった。この戦略的な買収により、ピノー家のポートフォリオが拡大しただけでなく、美術品および高級品部門における同家の地位も確固たるものとなった。
フランソワ・ルイ・ニコラ・ピノーは、グッチやサンローランなどの有名ファッションブランドを擁する大手企業ケリングで製品マーケティングに携わった豊富な経験をクリスティーズに持ち込む。ケリングの経営権は、現在87歳の父親が退任した後、フランソワ・ルイ・ニコラの父親であるフランソワ・アンリ・ピノーが2003年から握っている。一族の影響はラグジュアリーおよびファッション業界に深く及んでおり、アルテミスの監査役会にフランソワ・アンリの兄弟が参加していることからもそれがわかる。
グッチの最近の売上不振にもかかわらず、ピノー家はケリングの圧倒的な成功のおかげで、フランスの富と文化の分野で依然として大物である。ピノー家の息子の任命は、世代交代を乗り切る上で特に重要な節目をフランスの家族経営の企業に告げるものである。
アルテミスは、ファッションや高級ブランドへの投資以外にも、プーマ、ブドウ園、新興テクノロジー企業への投資など、ポートフォリオを多様化しています。さらに、昨年はクリエイティブ・アーティスト・エージェンシーの過半数株式を取得し、エンターテイメント分野での足場を固めました。
ピノー家の投資額から見れば、クリスティーズは62億ユーロという驚異的な売り上げを昨年達成したが、これは同オークションハウスの揺るぎない名声を反映している。しかし、ピノー家がクリスティーズを所有していることで、同家の美術界における影響力は高まり、著名なコレクターとしての地位もさらに強化されている。同家の膨大なコレクションは、1万点を超える現代美術作品で、パリのブルス・ド・コメルスやベニスのパラッツォ・グラッシなど、同家が設立した美術館で展示されており、同家の文化的影響力の大きさを物語っている。